月夜の海、人影なき砂浜。駆け上がりに立つ白波に厳しき現実を悟る。夏の時分の喧騒は遥か彼方へ。

　乾き切った満天の星空。長閑けき月にかかる雲なし。誰もが移ろい、すべてが凍てつく真冬の海。師走の年越しの忙しさを忘れ、今宵は、白い吐息で悴んだ指先を温めながら、心にまたたく星を眺めようか。

　　　　　　　　Ｐｒｅｓｅｎｔｅｄ　ｂｙ　ＳＵＺＵ

　冬、訪れる者を拒むかのように吹き荒ぶ突風に荒れ狂う波。
冷たき波しぶきに震えて佇むは冬の使者。

　空気や時間までが止まる冬の情景。見上げる灰色の空一面
から舞い降りる雪の礫。視界は狭く、見渡す限りの銀世界。

　虚しく時間だけが行き過ぎる。いつしか魚たちも、居場所を求
め、遠く深き場所へと旅支度。

　冬来りなば、春遠からじと言えども、寒さに打ちひしがれて、
ひたすら春の足音を待ち侘びる。

　震えて立ち尽くす岬の突端。逃げ出したい気持ちを堪え、来し方行く末、自分の存在に疑問符を投げかけ、自問自答。

　母なる海よ、大地よ、そっと僕に教えてほしい。

　浜辺で篝火を焚いて、ひとりその答えを探してみた。
　夢の中に出てきた幻を密かに追いかけてみた。
　自分探しはいつだって暗闇の中。

　静かに更けゆく紫紺の空に、願いを託す今日も彷徨い人。